2004年03月12日開放性としての公共性カテゴリー[情報社会]こんにちは。東浩紀です。また1週間ほどあいだが空いてしまいましたね。 今日はちょっと憂鬱な話を。 みなさんもご存じのように、スペインのマドリードでテロが起き200人近い死者が出ました。先月はモスクワで地下鉄内で爆弾テロが起き、40人が死んだばかりです。9・11の「手段」となった航空機も公共交通機関といえば公共交通機関ですが、テロリストの手は、いまや、地下鉄やバスなど、市民の足に伸びてきているように思います。実際、イスラエルに旅行を考えると(いちど経験者に相談したことがあるのですが)、まず忠告されるのは「バスは使うな」ということです。 おそらくこのような傾向が続けば、そう遠くない将来、地下鉄やバスを含め、多くの日常的な交通機関の利用に個人認証が必要となることは十分に考えられます。少なくとも大都市ではそうでしょう。安全面での配慮だけではなく、その認証とキャッシュレスなICカードを組み合わせれば、実際、多くの消費者がそれを歓迎するとも思います。むろん、市民団体の一部はその流れを「ビッグ・ブラザーの再来」と批判するでしょうが、いままでの経験から見ても、その批判はあまり力をもたないと予想できます。 ところで、そのようなシステムが整備された場合、当然のことながら、不法滞在者やホームレスなど確固たる身分証明をもたないものは、小銭をもっていても地下鉄やバスに乗れないことになります。それははたして「よいこと」でしょうか? よくないけど、安全のためには「仕方ない」のでしょうか? それを決めるのは社会全体です(前にこのblogで書いたとおり「社会全体」など本当はないのですが、それはちょっと横に置くとして)。しかし、少なくとも僕に言えるのは、こういうときこそ、「公共とは何か」について原理的に考えてみる必要がある、ということです。 あちこちの研究会でも述べてきたように、僕は、公共性の基盤は、あくまでも他者への開放性(openness)の論理であるべきであって、クラブ財的な発想で他者を排除できる共有地(commons)の論理であってはならない、と考えています。そこが見失われてしまったら、近代社会の最良の部分が失われてしまう。そして、私たちの社会は、情報技術の整備が後押しして、実際に急速にその開放性を失いつつある。これが情報自由論の基礎にある危機感です。 日本は、本当の意味では、まだテロに怯える社会になっていないと思います。カルトにしろ、北朝鮮にしろ、テロの脅威はまだ興味本位の「(笑)」と密接に結びついている。しかし、その状態がいつまでも続くとは思えない。東アジア全体があるていど豊かになり、いまはごまかされている民族的な多様性が火を吹いて、北京やソウルや東京でテロが起こるようになったとき、この国がどこまで市民社会の原理を貫けるか。そこでこそ、東アジア唯一の「先進国」という立場を長いあいだ独占してきた日本の真価が試されると思います。そんなことを考えました。
Posted by: hazuma : 2004年03月12日 11:29
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コメント
Posted by: Aransk : 2004年03月13日 16:07
眠いのに。明日http://harukazenojin.main.jp/に備えて寝なければいけないのに。 逆質問します。Aransk様は、B)C)故にhazumaはA)に反対していると仰いますが、 対案を実行出来る立場にいない者は、対案を示す必要は全く無いのですよ、いやいっそ示してはならない、とすら云い得るかも知れません。 更に質問。「テロ」「テロ行為」って何ですか?「テロリスト」って誰ですか?「防ぐ」とは、何をどのような状態に保つことですか?
Posted by: reds.akaki : 2004年03月14日 01:10
>reds.akakiさん 僕はAranskさんではありませんが、手短かに。 これはいくらなんでも悪質な開き直りに過ぎないと思います。酒 また、 >更に質問。「テロ」「テロ行為」って何ですか?「テロリスト」 との問いですが、過剰にコノテーションを読み込もうとする必要は
Posted by: デマゴーグ : 2004年03月14日 16:09
> 「テロ」「テロ行為」って何ですか?「テロリスト」って誰ですか?「防ぐ」とは、何をどのような状態に保つことですか? すぐに定義定義としたがる姿勢が誠実だとは思えない。テロが切実な意味合いで広く語られること自体、日本ではまだ最近のことで、テロの概念もやはり修正を余儀なくされているのに。定義自体が揺れ動くこと、あるいは定義が曖昧であることを織り込みつつ、粘り強く議論することの方が重要なのでは? > 対案を実行出来る立場にいない者に「対案を出せ」と迫ることは、卑劣で卑怯な振る舞いです。 永遠に傍観者でいろということでしょうか?
Posted by: W : 2004年03月14日 17:22
皆さん こんにちは
Posted by: Aransk : 2004年03月14日 18:45
デリダが「テロルの時代と哲学の使命」 私は新聞は主要5誌(日経・朝日・読売・毎日・産経)全て取っておりますが、今回のテロ 『解釈が介在した、情報化された印象が デリダの予見性には息を呑みます。 しかしそれでも、誰かがそのことを明確化
Posted by: kagami : 2004年03月15日 01:04
要は信用できない人間を排除するための
Posted by: Kow : 2004年03月15日 16:43
>皆様 イライラしながら書いた所為だと思います、すみません。わたし自身は「つい対案を提示してしまう」タイプなのです。
Posted by: reds.akaki : 2004年03月15日 16:44
こんなことを現代思想の入り口にも達していないヒヨッコが申し上げて しかし、事件の単なるデリダ的敷衍よりは、まだ付加価値があるのでは
Posted by: Aransk : 2004年03月15日 17:25
どうもです。 さて ところで、最後の投稿を読むと、Aranskさんは、テロや自由の問題そのものに関心があるというよりも、僕=東浩紀をダブルバインドに追い込むことそのものが質問の目的だったようです。フレーミングは時間の無駄ですので、そういうディベートのためのディベート的な書き込みは、以後遠慮していただけると幸いです。 以後類似した質問は削除します。
Posted by: 東浩紀 : 2004年03月15日 18:42
東先生 こんにちは >僕=東浩紀をダブルバインドに追い込むことそのものが質問の目的だった このご推測について若干説明させて頂きます。 1.これまで著名な評論家の方と直接ネット上で対話することがなかったもの この今回のご意見: >組織的なテロリズムを防ぐには政治的解決しかないはずで、そういう困難な努力を 政治的な解決を目指すのは当然であります。が、しかしながらやむを得ず >日本は、本当の意味では、まだテロに怯える社会になっていないと思います。 日本においてテロが発生した時点においてテロ対策をとるべきかどうかが、論点であったはず そこで初めて他者の痛みとして、排除される可能性のあるマイノリティーとテロに巻き込まれる 東先生、以上のような私の問題意識が、 >ディベートのためのディベート的な書き込みは、以後遠慮していただけると幸いです。 とご判断されるようであれば、 >以後類似した質問は削除します。 これに従って削除願います。
Posted by: Aransk : 2004年03月16日 14:42
道徳的総会屋のAransk様屁 デマゴーグさまWさま
Posted by: reds.akaki : 2004年03月16日 20:05
>reds.akakiさん フレーミングは時間の無駄ですので。
Posted by: デマゴーグ : 2004年03月16日 23:40
> reds.akakiさん > あなたが問題意識だと思っている事は、既に北田暁大氏のはてなダイアリーで、完全に論破されています、北田氏が書いた事を踏まえられないのなら、今後あなたは例えば「Aransk(道徳的総会屋)」と呼称されるべきです。 なんちゅー暴論。私自身はAranskさんの意見にも書き方にも好感を持てないが、北田暁大を読んでいなければ発言も許されないんでしょうか。誰もがネット上の全てのblogに目を通し、議論の文脈の全容を踏まえられている訳じゃない。読まずに(あるいはblogの存在を知らずに)発言したら総会屋呼ばわりですか。言葉づかいは丁寧だけど、ずいぶんと相手を馬鹿にした態度ですね。Aranskさんの意見が不愉快なら、あなたが論破すれば良い。 >傍観者という言葉について
Posted by: W : 2004年03月17日 06:05
要は不法滞在者やホームレスみたいな 空想してみた。 テロリストの末端の人間がバスに乗れるかも 指名手配犯はバスに乗れない
Posted by: Kow : 2004年03月17日 10:32
>システムの識別精度をあげて 東先生の危惧は、 そうしなければ、永遠に我々はテロリズムの
Posted by: kagami : 2004年03月17日 11:44
わたしが と書いた後に、 Posted by: Aransk : 2004年03月15日 17:25
Posted by: reds.akaki : 2004年03月17日 11:54
いずれにせよ、 Aという街のタクシーに爆弾をしかけた人間が 政治的、偏見的な線引きの介在しないシステムが情報工学的に得られる事実だけに基づいて稼動するってこと。 個人認証みたいに、疑わしい人間すべてを
Posted by: Kow : 2004年03月17日 13:44
爆弾を爆発させた「あと」に、その人を追跡できても、安全は守られません。自爆テロ犯が自爆したあとに住所がわかっても「安全が守られた」ことにはなりませんよね。 となると、「爆弾を作りそうな人」や「爆弾を作れる人」「爆弾の材料を集めてる人」を完璧に特定するシステムが作られるわけです。 そして、それを特定するためには、日頃から「一人一人が何を買ってるか」「誰と会っているか」「何を知っているか」の全てを記録する必要が出てくる。 また爆弾犯という事実を追跡するだけなら、価値観や偏見は排除できるかもしれませんが、上みたいに個人情報から、「この人はテロリスト」というのを「推定」する際には、どうしても不確実さをともなうし、そこには政治的、社会的な偏見が反映されざるを得ません。 「個人認証みたいに、疑わしい人間すべてを排除するシステム」「政治的な偏見で人間を裁くシステム」は、KOWさんの考える世界にはほぼ必然的に存在しちゃうわけですよ。
Posted by: BBWY : 2004年03月17日 14:06
今ここで熱く語られてることってのは、刑法で何十年も前から議論されてる、「結果無価値」か「行為無価値」かって話につながってますよね。 だから、やっぱ「社会契約論」からこの刑法の議論ぐらいまでは踏まえた上で、「今のテクノロジーではどんなことが可能なのか」ってところをそっち方面の専門家を交えて議論しなきゃ、素人があーだこーだ言ってても何も進まないんじゃないですかね。
Posted by: OKAWA : 2004年03月17日 14:34
東浩紀です。ふたたびコメントがいっぱいついていて、驚くやら嬉しいやら。。 直前の投稿のみへのレスになり恐縮ですが、 >今ここで熱く語られてることってのは、刑法で何十年も そのとおりなんですが、ここで厄介なのが、プロファイルによる未来予測というやつだと思うんです。Kowさんへのkagamiさんの反論もそれを踏まえてのことだと思うんですが、情報化が進み蓄積される個人情報が圧倒的に増え、統計的な推測の精度がどんどん上がってくると、あるひとが「何をするつもりか」ということと、そのひとが「何をやったか」の区別がどんどん曖昧になってくる。別の言い方をすれば、主観的要素が客観的に推測可能になってくる。さらに別の言い方をすれば、それが「リスク」の考えかたなんですね(波状言論をもし購読されていればリスク社会の話が出てきます)。実際、9・11のテロのあと、アメリカでは国防省がえらくSF的な国民データベース構想を打ち出して非難を買いました。 そして、こういう問題に通暁している「専門家」がいるかというと、意外といないというのが現状だと思います。僕の知るかぎり、情報通信論壇で活躍している法学者さんや弁護士さんは少ないですね。。。むろん、だからといって素人語りが正当化されるものでもないのですが。要は、新しく難しい問題なのです。
Posted by: 東浩紀 : 2004年03月17日 15:08
>爆弾を爆発させた「あと」に、その人を追跡できても、安全は守られません。 そりゃそうだけども、 自爆テロには効果がないとか 罪を犯しそうな人間を全員おっぱらうんじゃなく
Posted by: Kow : 2004年03月17日 15:34
波状言論の方でも触れられておりますが、高度な情報管理社会は有責者の原理を否定し 莫大な対コスト費用の掛かる個々人全てへのリスク管理のメインは 自分の行動が全て記録され計測されラベリングされ判定されるような社会は、 果たして我々は社会全体の為にそこまで個々の行為有責な主体性を売り渡してしまっていいのか。
Posted by: kagami : 2004年03月17日 17:00
>我々個々は社会と契約しているに過ぎないという立場に一度戻って考える必要があると感じます。 で、考えた結果いきつく先の一つが
Posted by: Kow : 2004年03月17日 17:21
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このblogについてこのブログは、批評家・東浩紀の近況を伝えたり、未完成のアイデアを公開したりするためのものです。運営者は東浩紀本人です。東浩紀の経歴や仕事については、当ブログの親サイトにあたる「hirokiazuma.com」を参照してください。 このブログは、別の形式で運営されていた近況欄を引き継ぎ、2003年12月にオープンしました。2000年8月から2003年7月までの近況欄は、通常のHTML形式で公開されました。その内容は、上記サイトの「以前の情報たち」のディレクトリに格納されています。 また、2003年8月より11月までの近況欄は、無料の日記サービス上で、「hirokiazuma.com@はてな」として展開されました。現在同ページは、「波状言論::はてな出張所」として、東浩紀が運営している自主流通本プロジェクト「波状言論」の告知ページとして運用中です。 波状言論では、現在、メールマガジン『波状言論』や評論本『美少女ゲームの臨界点』などを作成・販売しています。詳しくは、上記のはてなサイトをご覧ください。 このサイトはリンクフリーです。 最新の投稿
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東先生 こんにちは
最近ようやく先生の本を読み出した初心者です。よろしくお願いします。
上記文面拝読致しました。先生の憂鬱感と不安感は良く理解できます。
こんな心配をせずに公共交通機関を利用したいものですね。
A)>>おそらくこのような傾向が続けば、そう遠くない将来、地下鉄やバスを含め、多くの日常的な交通機関の利用に個人認証が必要となることは十分に考えられます。>>
B)>>僕は、公共性の基盤は、あくまでも他者への開放性(openness)の論理であるべきであって、クラブ財的な発想で他者を排除できる共有地(commons)の論理であってはならない、と考えています。>>
C)>>この国がどこまで市民社会の原理を貫けるか。そこでこそ、東アジア唯一の「先進国」という立場を長いあいだ独占してきた日本の真価が試されると思います。そんなことを考えました。>>
先生のご趣旨はテロを防止するためにA)が考えられるが、B)の観点から
それは望ましくない。従ってテロが発生してもC)のような開放の原理を
貫けとの主張と思います。
勿論、先生はテロ行為そのものにはご反対のお立場と思います。
そこでお聞きしたいのは、テロリストを防ぐ手段として何を考えて
おられるのでしょうか?