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Winny開発者逮捕

カテゴリー[情報社会]

おはようございます。5月9日で33歳になった東浩紀です。今年もよろしくお願いします。

さて、みなさんもすでにご存じかと思いますが、Winnyの開発者「47」氏が逮捕されました。

http://www.asahi.com/national/update/0510/004.html

ポスト2ちゃんねる的な匿名コミュニケーションの場としてP2P掲示板の可能性が謳われていた時代もありましたが、これでその可能性は文字どおりなくなったわけです。開発者まで逮捕されたということは、Winny摘発に対する警察の並々ならぬ情熱を示しています。今後、日本では、匿名的なファイル交換ソフトを開発するひとは出てこないでしょう。

なんか、ここまで事態が進展してくると、匿名性の価値云々みたいな原理論をたてるのも空しくなってきて悲しくなるばかりです。それに、日本では、そもそも問題の出発点が、匿名性とかセキュリティとかですらない。テロリストがWinny掲示板で連絡を取り合ってデカい事件を起こしたとか、小児性愛者のグループ(このあいだフランスで大きな集団が逮捕されましたが)がWinnyでサンプルファイルばらまいてエロビデオのシンジケートを作っていたとか、そんな社会的事件が起きたのならともかく、またもや口実は著作権です。

いまや著作権は、インターネット規制を推進するときのマジックワードになっている。ネットだけじゃない。最近話題のレコード輸入権問題もそうです。グローバル化と情報化のなかで、新しく誕生し、既存の産業構造を脅かす情報流通がつぎつぎと生まれている。他方で、その流れをコントロールする口実として、著作権が使われ始めている。しかし、自分自身も著作権でメシを食っている人間としてあえて言いますが(僕は研究機関にも所属していますが、主な収入源は印税と原稿料です)、著作権ってそんなに万能なものでしょうか?

5年くらい前、ネット時代の三大悪として、ドラッグとテロとチャイルドポルノが挙げられているのをどこかの本で読んだことがあります。当時の僕は、ポルノとテロが同じレベルで並べられているのに驚いたものですが、最近では、レッシグも言うように、ポルノの制作どころか、音楽ファイルのコピーすらテロ並みの社会悪として扱われるようになっている。

しかし、そんなのは、旧態依然の音楽産業や映画産業が作り出したレトリックにすぎない。新しいテクノロジ-が生まれたのなら、新しいタイプの著作権管理、新しいタイプの課金システムを考えていくことこそ必要であって、その新しいテクノロジーを無闇に犯罪化してもそんなシステムが長続きするわけがない。ましてや、その新しさに挑戦するソフト開発者を逮捕するなど論外でしょう。

だいたい日本は、音楽も映像もネットで自由に聴けないし見られない。韓国のドラマなんて、一話300円ぐらいでがんがんやっているわけです。そういう選択肢がないうえに、CDやDVDはべらぼうに高い。たとえば最近僕は、「24」シーズン2のDVD-BOX英語版(Region1)を買いましたが、全24話で7500円。日本語版は今月末に出るけど20000円。この価格差は何なんだ? アニメのDVDだって、一部のオタクを相手にしているためかメチャクチャに高い。攻殻機動隊SACなんて、全巻揃えたらいくらになるんだか。こういう状況が、違法コピーを後押ししていることはだれが見ても明らかでしょう。

著作権法違反は違反として、厳罰に処するべきでしょう。しかし、新しいテクノロジーとの共存を模索しないのは単純に間違いだし、いつまでも消費者をだまして高いものを買わせられると思うのも間違いです。

【追記】

金子氏(47氏)本人は違法性を認めた、と報道されています。

http://www.sankei.co.jp/news/040510/sha054.htm

しかし、僕は、このような逮捕は、結果的にP2Pソフトの開発そのものを非合法化するものであり、そのことによる文化的、社会的損失は計り知れないと考えます。それに、Winnyの流布が著作権法違反幇助だというのならば、サービスプロバイダも何もかも全部幇助じゃないでしょうか。Yahoo!BBにしてもNTTにしても、トラフィックの何割がWinnyか知らないわけじゃないでしょう。

Posted by: hazuma : 2004年05月10日 11:23 | TrackBacks

コメント

あぁ、東先生、お誕生日おめでとうございます。
P2Pですが、東先生と同意見です。
開発そのものを非合法化するのはどうなるものか?
ハッカー倫理の摘発ともいうべき今回の事件は
仰る通り、わかれめ、になると思います。
東大助手といういい人材なのだし。
 先生、お誕生日、おめでとうございます!”

Posted by: mido : 2004年05月10日 14:18

 あぁ、連続投稿すいません。(泣)
「著作権違反は違反として、厳罰に処するべきでしょう。」
僕もそう思います。利用者じゃありませんし。(念のため)
>山根信二さんはこの件をどう思っているのでしょう?
>山根さん!

Posted by: mido : 2004年05月10日 14:28

お久しぶりです>midoさん

今回の件では、ハッカーのみなさんにぜひ声明など出していただきたいですね。もしかしたら、専門家の目から見ると、上記ほど簡単な問題じゃないのかもしれませんが……。

Posted by: 東浩紀 : 2004年05月10日 14:41

お久しぶりです>東先生!
盗聴器なんかが堂々と販売されています。
製作者が迷惑防止条例で逮捕された
って未だ聞きませんよね?

Posted by: Jab : 2004年05月10日 15:25

連続投稿すみません。(泣)
Winnyも盗聴器も利用者じゃ
ありませんので念の為。

Posted by: Jab : 2004年05月10日 15:28

はじめまして。
今回の事件に関する見解は同意します。
著作権と言う、基本的人権と比べて脆弱な筈の権利が万能の刀にされて基本的人権が蹂躙されている状況が決定的になった事を憂慮しています。

前々からネット言論では著作権で批判を封じる動きがあった所に任天堂エロパロ逮捕事件が起きて、既に悪い予感がしていたのですが、ここまで無策であった自分を責めます(一会社員ですので)

しかし、いい加減動かないといけないのではないかと言うことでblogで少し問題提起と行動提案して見ました。

今後ともよろしくお願いします。

あるて。as Artane.

Posted by: Artane. : 2004年05月10日 17:18

田中真紀子の娘による言論弾圧みたいなことが
ネットにまで横行していったら、特定サーバに
頼らないネットワークを介したファイル交換と
それに付随する形で課金機能を持たせたような
ソフトが必要になってくるかもしれない
ファイルの頒布は権力側が阻止することができないが
ファイルを開くには課金システムにより
利用者側が支払わないと動かないような物をですね

支払方法も一般的なクレジット・カードならば
オフショアの口座にドル建てで支払うことも可能なんだし

あれですよ
高機能なネットワークというのは
最強の軍事回線に転用することもできれば
ゲバヘルあるてが支持する独裁国家を
内側・外側から打倒することもできる
ファイル交換とはまた違うけれども、あるソフトでは
各自のマシンの能力を分担して高分子蛋白の解析すらできてしまう
そういう次元の話ですよ
著作権がいくら偉そうにしてても所詮次元の違う話で
小林亜星や田中真紀子のために何で全人類的な
損失を被らねばならないのかという話です、はい

Posted by: ヒッキー大佐 : 2004年05月10日 21:43

>著作権と言う、基本的人権と比べて脆弱な筈の権利が万能の刀にされて
>基本的人権が蹂躙されている状況が決定的になった事を憂慮しています。

世界人権宣言では以下のようになってますね
著作権も基本的人権と言えるのではないでしょうか

>世界人権宣言
>第27条
>2 すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる
>精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。

Posted by: しま : 2004年05月11日 02:08

東さん
お誕生日おめでとうございます。

さて輸入権ですが、著作権保護という大義名分すら離れ、個人持込を禁止するほどひどいことになってきているみたいですね。知人が廃案を目指して飛び回っていますが、業界人もまだ認識が甘いと嘆いています。

Posted by: 絵羽字音 : 2004年05月11日 02:24

何年も前の47氏の書き込みが、今になって犯罪予告めいた使われ方で引用されて報道されまくっているのはちょっと恐いですね・・・

Posted by: XP : 2004年05月11日 09:25

 「今回の件では、ハッカーのみなさんにぜひ声明など出していただきたいですね。もしかしたら、専門家の目から見ると、上記ほど簡単な問題じゃないのかもしれませんが……。」
いやぁ、本当にそうです。
  ハッカーのみなさん、CPSRさん、
  立ち上がる時だと思います。
  コンピュータ文化としての、
  ハッカー倫理が問われる事件です。
  是非、共同声明を行ってください。
  御見解を「専門家」の立場からうかがいたいものです。ハッカー>ALL. 

Posted by: mido : 2004年05月11日 11:43

東先生のお力で、開発者の方を
なんとか助けてあげられないでしょうか…。

あと、ちょっと話は違うんですが、
今、東大は法人化の関係で、
助手という役職が廃止され、
研究員、上級研究員、主任研究員とかの
助教授の下の職業学者さん達は全員
が研究員になる制度になったのでは
とニュース見ていて思いました…(^^;
助手って報道されてるので驚いてしまって…
そこはどうなんでしょうか…?

経歴的に、将来東大の助教授、
もしかしたら教授までいける
コンピュータウィザード的に優秀な人材
(魔法使いクラス!)を
失ってしまうことは、日本に
とって大変な損失だと思いますね…。

Posted by: kagami : 2004年05月11日 20:46

http://www.emaga.com/bn/?2004050027457484008676.xp010617

Posted by: ヒッキー大佐 : 2004年05月12日 18:58

ITビジネスニュースの記事を切っ掛けに全文を拝見させていただきました。
私も先生と同じような意見を持っています。
この逮捕は本当に正しいのか、見せしめのためだけに逮捕されたのではないだろうかという疑問が頭からはなれません。
この逮捕で今後P2Pの発展が遅れると思うとますます疑問が膨らむばかりです。

Posted by: ほのか : 2004年05月12日 23:25

初めまして^^
今回のWinny作者逮捕は甚だ遺憾であったので、
この分野の技術者の「はしくれ」として書かせて頂きます。
P2Pの技術は、それこそ突き詰めれば、プロバイダーを介さずとも
インターネット空間への接続を可能とするものです。
その理由として、メインフレームと呼ばれるインターネット接続サービスを施行するサーバと
個人所有のPCの性能差が限りなく接近しつつある現状を、
私は実感として持っています。
この性能格差の無くなる状況が続くならば、近い将来、
この性能差は限りなくゼロに近い位置になるであろうと確信しています。
(オフィスコンピュータ:略して「オフコン」が死語である事を思い出してください。
要はパーソナルコンピュータとオフィスコンピュータの性能差が無くなった為、
より汎用性の高く、個人にコミットした「パソコン」が生き残ったのです。)
そうなった時、P2Pは今までのインターネットの常識を根底からひっくり返す程度の
可能性を秘めた素晴らしいモノであると私には思えます。

日本はルース・ベネティクト女史(「菊と刀」の作者)が50年以上前から指摘するように、
非常に、それこそ呆れるくらい保守的な御国柄です。
最初にCPUの概念を持ち出したのが日本人であったにも関わらず、
本国では歯牙にもかけてもらえなかった状況を彷彿させます。
どうも日本国というのは新しい技術が芽吹くには不向きな環境のようです。

そもそも、この事態に「著作権」を持ち出してくること自体がナンセンスだと考えます。
何故なら、例えばBooK○ff等ように「著作の所産の転売」で利益を得ている方々が日本社会には沢山居ます。
しかし、winnyはその性質上。いくら著作権に抵触するファイルをバラ撒いても、バラ撒いた本人は、
1円の得にもなりません。著作権保持者にしてみれば両者とも「著作侵害」に当ると考えます。
片方は処分されず、片方は処分されるという状況は合点が行きません。
著作権を厳密に論じるなら、中間マージンを搾取している分、
BooK○ff等の業者の方が遥かに罪は重いと私は考えます。

インターネットを取り巻く我ら業種で、
もし仮に日本が優位に立ちGNPを少しでも上昇させたいのであれば、
少しでも景気回復の足がかりを模索するのであれば、
今回の逮捕は帝国時代の思想犯逮捕とか、
言論統制といった愚鈍で後向きな政策と何ら代わらぬ位置に属します。
つまり、後世で笑いものになると言うことです。

その位に、今回の被害は大きいと言わざるを得ません。
その理由として、Winnyの後継と目されたP2Pソフトも公開が停止しました。
名前は伏せますが、このソフトはファイル拡散の機能を持っており、この技術を転用すれば
現在のインターネットの中央集権的サーバ配置であっても地方の方々は、
それを実感せずにインターネットを楽しめる事になります。
この拡散技術はインターネットの根本である弱結合の仕組みと非常にマッチしており、
今後無限の可能性を秘めていると私事ではありますが、考えておりました。
この様な考えの方は、インターネットに関する技術者の間では決して少なくないと思われます。
その芽を摘み取った責任を京都府警は取ってくれんですかね?

Posted by: 平手造酒 : 2004年05月14日 03:33

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