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Hakagixとファウスト

こんにちは、東浩紀です。みなさん、お元気ですか。僕は連日の暑気と夏コミ本の作業で追われて体力的にヘロヘロになっています。ちょっと作業が一段落したので、投稿します。

本家のサイトも、ほぼ一ヶ月ぶりに更新しました。夏コミ本の購入予約も受付を始めました。

hirokiazuma.com
HajouHakagix:美少女ゲームの臨界点

それにしても、こうやって整理すると、ここのところ波状言論以外の仕事はほとんどしていないことをあらためて思い知らされます。「それで生活大丈夫なんですか」とよく訊かれるのですが、むろん大丈夫なわけはありません。インタビューが溜まるのと反比例して、貯金はどんどん減ってます。昨年の稼ぎを食いつぶして批評道楽に勤しんでいるのですが、さすがにこれではマズい、という危機感もあります。8月のコミケが終わったら社会復帰を考えねばなりません。

とはいえ、今年は、カネになっていないことを横に置けば、ここ数年でもっとも批評家らしい仕事をしている年で、それには満足しています。6月号の椹木野衣・八谷和彦対談にしろ、7月号の阿部和重・法月綸太郎対談にしろ、ともに商業誌にひけをとらない質の(そして、商業誌では絶対実現できない量の)テクストになっていますし、夏コミ本で行ったササキバラ・ゴウ氏へのインタビューも、『新現実』に興味をもった読者にはぜひ読んでもらいたいものです。こういう活動が個人ベースでできるのも、ひとえにICレコーダやメールやデジカメやInDesignのおかげであり、なんか、もう業界から遠く離れて、株かなんかで一発当てて、どこか南の島で同人誌でも楽しく作り続けて余生を過ごせたらいいな、とか最近は考えています。人間関係に疲れたのかも……。

あと雑談。舞城王太郎氏が芥川賞候補になったそうで、とてもよいことだと思います。佐藤友哉氏も西尾維新氏も精力的に作品を発表しているし、太田さんが見出したあの3人の実力がようやく世の中に認められてきた、といったところでしょうか。いま時代はライトノベル・バブルの様相を呈していますが、ブームが過ぎ去っていっても、彼らの作品はちゃんと読まれていくことでしょう。僕はブームにはまったく興味がない(どころか反感をもっている)し、それに乗って本を売ろうとか賞の選考委員をやろうとかぜんぜん思っていないのですが、彼ら3人の文学史的評価に関してだけは、批評家としてきちんと責任を果たしておきたいと思っています。

そういえば、『ファウスト』のほうも部数が大幅に伸びたようで、いまや小説誌全体のなかでも大物雑誌になってしまいました。つい先日、太田編集長と会ってお祝いの言葉を伝えましたが、そんな流れのなかで、僕のようなマイナーで商業主義軽視の批評家にどんな存在価値があるのか、いささか悩みどころではあります。

夏コミ本(220pのフランス装・フルカラー表紙の評論本)は、もし僕が『新現実』を自由に編集できたらやったはずの企画を、ひとりで勝手に実現したような本です。いまだから言いますが、2002年の秋、『新現実』第2号用に僕が書いた秘密の企画書には、上遠野浩平、佐藤友哉、乙一、滝本竜彦の各氏に並んで、元長さんと原田さん、そして奈須きのこ氏と涼元悠一氏の名前があったのでした(このアイデアがのち『ファウスト』に流れていきます)。僕はあのころから、ライトノベルと美少女ゲームの交差点を捉える批評的枠組みについて延々と考えていたのですが、いろいろあってそんな企画は大塚さんには理解されず、いまだって『空の境界』がいくら売れても批評が活発になることはありそうにないので、ついに個人出版で実現するところまで追いつめられたわけです。(笑)

そんな経緯があるので、この本については、多くの読者が興味をもってくれるととりわけ嬉しく思います。『ファウスト』はむろん太田さんの個人誌なのですが、もしその編集方針に僕が多少とも貢献できたとするのなら、そちらのほうの起源は、伝奇でもメディアミックスでもない、この本に書かれたようなヴィジョンにあるのです。『ファウスト』が急速にメジャー化しようとしているいま、そのことを、たとえ個人出版としてでもかたちに残しておくことは重要だと考えました。

そして業務連絡。こういう次第なので、書店員さんなどで、この本の委託販売に関心のある方はぜひ編集部までご一報ください。前回までは青山ブックセンターさんととらのあなさんが主な取引先でしたが、今回は、僕だけの本でもありませんし、『ファウスト』や『新現実』と並べて(は、さすがに無理にしても 笑)幅広く置いていただきたいと考えています。そんなときのために、ISBNまで取っちゃいました!

見本誌は8月15日までできあがりませんが、7月下旬以降であれば、InDesignファイルがあるのでサンプルをお見せできます。とにかく、内容の濃さだけは間違いないです。そしてマップが自信作です。


8月7日の追記。
夏コミコピー本のため上記の新現実用企画書を引っ張り出してきたところ、上遠野氏と原田氏の名前はありませんでした。僕の記憶違いのようです。上遠野氏は打ち合わせの席で話は出たものの、企画書としてはもっていかなかったようです。原田氏はver2の企画書で入っていますが、こちらはちょっと公開できないのでコピー本には入りません。

comments

コメント

精力的なご活躍の成果、いつも楽しませて
頂いております。最近は、
社会一般においても、
美少女ゲームにおいても、血と大地的な
意義を重視する傾向が強く(後者は国家
よりも家族オンリーですが)ある種一致した
符牒が感じられますね。
舞城さんはこの部分に明らかに意識的な
作家の一人であり、そういった視野を考えるに
とても面白い動きを感じます。
こういった動きはポストモダニズムの無限に
広がる流れとグローバル化に対抗する
ネオ・ナショナル的思想哲学の形成として
私は捉えているのですが、そのとき、一種の
死(SEXはある種の死である)
を主題にすることで、存在論的な
超越をそのうちに孕んできた美少女ゲーム
の思想的重要性を日本で唯一見ぬくことが
できた東先生の重要性は、
世の中の流れと共に
今、飛躍的に高められてゆくと思います。
批評活動、どうか頑張って下さい。
時代は先生の後を追って流れています。

後、先日発売されました美少女ゲーム
「3days」は存在論的現象学をベース
にした移植の思想作品であり、本作品が
うちに含む思想性は極めて優れていると
思うのですが、
先生はプレイなされましたでしょうか?
本作は、よろしければいつの日か
東先生のご批評をお聞きしたい、
そを楽しみにしたいと
私に思わせる作品でした。

投稿者: kagami
投稿時刻: 2004年07月10日 09:10

うわっ! 早いコメントですね。いらっしゃいませ。
3 days、残念ながらこの本には間に合いませんでした(泣)。腐り姫、CROSS+CHANNELなど好きなので、気にかかる作品ではあったのですが……。プレイするのはこの本の編集作業終了後になりそうです。楽しみにとっておきますね。

投稿者: hazuma
投稿時刻: 2004年07月10日 09:23

3days、楽しんで頂ければなによりです(^^)

話は変わるのですが、舞城さんの
芥川賞候補作
「好き好き大好き超愛してる」を
読了したのですが…。
凄く驚嘆したのですが、これは、
東先生に送られた私信的小説として
機能しているとしか、どこからどう見ても
考えられない作品だったのですね…。

小説中のあらゆるタームに東先生が
関わってきたこれまでのターム
(エヴァ・ファウスト、その他諸々)
と批評の意味性がズラした位相で
重ねられていて、東先生御自身も
「ASMA」というタームとして登場する。
そして、
「つまり、美というものは倫理とは別のところにあること、ただし批評は倫理とともにあること」
とでてきますからね…。

作家が小説で批評家にメッセージを送る
ことはこれまでもありましたが、
それを芥川賞でやることになったことはまだなく、
この作がもし授賞すれば、東先生は文壇で
最も留意される批評家となりますね…。

頑張って下さい。
これは素晴らしいチャンスだと思います。

投稿者: kagami
投稿時刻: 2004年07月11日 00:01

内容に興味はあるのですが、値段と本のボリュームに不安があるので(かさばりそう)、
会場で中身を見てから買いたいのですが、コミケ当日は普通に買えるのでしょうか?
インフォメーションページなどを見る限りでは、なんか予約者のみの販売とも受け取れる
ので。

投稿者: saitou
投稿時刻: 2004年07月13日 12:05

東です。返事遅くなってすみません。

当日も普通に売ります(その場合は特典本がつきません)。ただ、在庫管理のリスクを冒したくたいので、初版は少なめにしか刷りません。午後遅くだと売り切れているおそれがありますので、早めに買いにきていただけると助かります。

投稿者: hazuma
投稿時刻: 2004年07月14日 05:07


先生。おつかれですか?
  疲労されているようで、なんか、そんな感じですけども、
 ご休憩なされてください。3日くらい何もしない、(読書など、)
  とか、あえて、頭を使わないような過ごし方をしないと、
  病院送りとかになると大変なので。動悸だとか、
  めまいだとか、いろいろ出たりすると、
  柄谷先生も半年くらい何も出来なかった、とか、
  そんな先生の、東先生の陥落が来たら、
   ファンのみなさんもショックでしょうし、
   お休みはしっかりおとりください。
   「超人」は無理。midoはそう考えています。
   先生、お気をつけて。
   休憩を!

投稿者: mido
投稿時刻: 2004年07月16日 14:05

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投稿時刻: 2006年01月05日 23:06

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