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ここは、批評家・東浩紀が運営するブログです。東浩紀の経歴や業績については、hiroki azuma portalをご覧ください。

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スカイ・クロラ見ました

たいへん遅まきながら、『スカイ・クロラ』を、昨日ようやく見てきました。

みなざんご存知のように、僕は押井ファンを自称しています。しかし、ふと振り返ってみれば、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』に衝撃を受けてから四半世紀、押井の映画と言えばほぼ劇場に足を運んではいるものの、失望し首を傾げた経験ばかりが積み上がっています。つまりはぼくはじつは、『ビューティフル・ドリーマー』以降、押井作品に満足した経験がほとんどない。そんなんではたしてファンと言えるのかたいへんに疑問なわけですが、今回もそんな厄介な心理状況のなか、これはもう絶対に後悔する、いやな気分になるに違いない、と何重にも防衛線を張って、でも観に行かないわけにもいかないしとうんざりしながら、のばしのばしにしてきた『スカイ・クロラ』の劇場に足を運んだわけです。きっと、こういうファンを粘着とか言うのでしょう。困ったものです。

しかし!

しかし、実際に見てみれば、『スカイ・クロラ』は、たいへんに意外なことに、そして喜ばしいことに、上記のような粘着的な心理などとはまったく関係がなく、率直にすばらしい映画でした! ぼくはこの作品は名作だと思います。ぼくは嬉しいです。押井監督の映画についてこんなふうに率直に肯定の言葉が出てくるのは、四半世紀ぶりです。

僕は、この映画について人々がなにを語っているのか、ほとんど調べていません。また関連書籍(原作含め)も読んでいません。したがって、いまは作品批評を書く準備ができていません。ですから、本当に、ごく素朴な感想、というか幼稚な感想しか書けません。

そのうえで述べると、押井氏の映画では、むかしからある種の悲しみや諦めが主題になっているわけです(ループとかメタフィクションとかはその主題から要請されるコロラリーにすぎないのですね)。その主題が今回は、物語の水準でも映像の水準でも、本当にストレートに、おそらくいままでのどの作品よりも率直に描かれています。ぼくはその率直さに心を打たれました。そして、やはり押井と宮崎はライバルなのだとあらためて思いました。『崖の上のポニョ』を見れば明らかですが、宮崎映画は基本的に快楽に肯定的で、生命賛歌、映像賛歌として作られている。それこそが宮崎の人気の理由であり、またそれは彼が真の意味で芸術家であることを意味するのかもしれませんが、しかし、僕はやはり、押井のこの悲しい、去勢された不能なセカイのほうにはるかに共鳴してしまう。その感性は、おそらく批評家としての東浩紀の中核にあるものです。だからぼくは、いささか自己言及的な言い方になりますが、『スカイ・クロラ』を観ながら、この映画をいいと感じる自分の感性にあらためて触れて、自分の来し方行く末に思いを馳せたりしていました。

いまから24年前、ぼくは『風の谷のナウシカ』と『ビューティフル・ドリーマー』にほぼ同時に出会い、そして後者に惹かれたわけですが、もしあのころの僕が今年、『崖の上のポニョ』と『スカイ・クロラ』に出会ったとしたら、やはり絶対的に『スカイ・クロラ』を選んだことでしょう。

いやはや、僕が押井映画を褒める日がふたたび来るとは思っていませんでした。『スカイ・クロラ』の世間での評判がどうなっているのかぜんぜん知りませんし、映画マニアやアニメマニアの評価もまったくわかりませんが、僕は個人的に、もういちどこのような押井作品に出会えたことをとても幸せに思います。ぼくの人生にとっても、記念すべきことです。


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