kajougenron : hiroki azuma blog
about
ここは、批評家・東浩紀が運営するブログサイトです。東浩紀の経歴や業績については、当ブログの親サイトに情報があります。hiroki azuma portalをご覧ください。
navigation
カテゴリー
critique [72 items]glocom [15 items]
hajou [20 items]
misc [35 items]
moblog [30 items]
recent works [14 items]
archive navigation
blog entries at 【2004年05月】
Winny開発者逮捕3
カテゴリー[critique]投稿日時: 2004年05月19日16:03
Winny問題については、前回のエントリーのあといくつか取材を受けました。そこで考えたことを簡単に整理します。
■
今回の事件が提起した問題は、二つに分けるべきだと思います。第一は、
(1)現行の著作権制度とP2Pの可能性の矛盾という問題。これはつまり、モノの複製不可能性を前提とした歴史的な財産権(property)のシステムと、データの複製可能性が引き起こしている矛盾で、きわめて原理的な問題です。
この場合、人々の立場としては、(1-a)なにがなんでも古い著作権制度を守ろう派。つまり、データの流通には顔をしかめる派と、(1-b)データの複製可能性を前提とした新しい著作権システムを考えよう派に分かれるわけですね。charlieがここで記している不満は、この(1-b)の立場のひとたちが、コンテンツ流通の現場を知らない理想論ばっか言ってるんじゃないの?というものですね。これは鋭い指摘だと思います。
■
しかし、Winnyの事件はもうひとつの問題も提起していて、それは、
(2)Winnyが現行の著作権制度を逸脱する「反社会的」ソフトだったとして、その反社会的な行為になぜ100万とも200万とも言われる人々が加担したのか、という疑問なわけです。
こちらの問題は、実は、デジタルがどうのとか、P2Pがどうのといった話とは関係ありません。むしろ、本質は(突飛なことを言うようですが)年金未納問題に近いように思います。
今日の新聞にも書いてありましたが、国民年金の未納者は2003年度も37%。これだけ払っていないひとが多いとなると、僕は、これは、国民の意志と見なすべきだと思うのです。選挙や司法は、国民の意志を国家運営に反映させる唯一の手段ではない。実際、報道や世論調査も大きな役割を果たしているわけですが、こういう集団ボイコットのかたちで示される意志もあると思うのです(ちなみに、この問題は、ずっと前に書いた「降りる自由」とも関連します)。おそらく、未納者のほとんどは、年金制度そのものが必要ないと思っているわけではない。年金は納めたいけど、現行制度はあまりにひどいから収めないわけです。そして、そのせいで自分が年金をもらえなくても、それは仕方ないと考えている。
Winnyで起きたのも、原理的には同じことではないでしょうか。Winnyの流行で示されたのは、単価が高いうえにマイナーな作品が手に入りにくい現行のコンテンツ流通システム全体に対する大きな「NO」だと、僕は理解しています。200万人近いユーザすべてが確信的な犯罪者で、コンテンツなんてカネ払わなくて当然だと思っていたかといえば、それはやはり考えにくい。実際には、あの音楽聞きたいなあ、あの映画見たいなあ、と思ったとしても、CDを買うと不要な楽曲も入ってくるしDVDは無意味に高いしレンタルビデオ屋は遠いうえにハリウッドの新作しか置いてないし、じゃあとりあえずnyで探してみるか、というひとも多かったと思うわけです。
裏返せば、それらの人々は、安価で便利で作品の多様性を保証した課金システムがネット上にあれば、著作権を尊重した行為へと誘導できたはずだと思うのですね。Winnyがこれほどまでに流行した背景には、日本のコンテンツ業界が、消費者の側にたった流通システムを構築してこなかったという現実があると思います。少なくとも、そのように理解しなければ、Winny問題から何も学べないことになる。年金制度改革に対するいまの政府のように、です。
そして、このように考えると、やはりWinnyの存在には大きな意味があったと思うのです。それは、結果的にではあれ、人々が現状のコンテンツ流通に対して否を突きつけるオルタナティブな場を用意してくれたからです。京都府警は、そのオルタナティヴな試みを「著作権制度に対する反抗」と捉えているわけですが、本当はそれは「現行のコンテンツ流通システムに対する反抗」だったのではないでしょうか。
■
今回の逮捕劇に関する随所の反応を見ていると、P2Pの可能性はいい、しかし違法コピーは許せない、Winnyの開発者がそれを知らなかったはずがない、したがって金子氏は捕まっても仕方ないだろう、という意見が多いのですが、それはあまりに単純すぎると思います。違法コピーは許せない、それはそうでしょうが、それを繰り返すだけでは、「じゃあ違法コピー以外でWinnyって使われていたのかよ?」というcharlieのツッコミに反論できない。
問題は、その違法行為がこれだけ広範に拡がってしまったという現実であり、そんな現実を必然にした理由です。無法状態を改善するためには、現実が変わると同時に、法やシステムのほうも変わる必要がある。これは別に、上記1のような原理的問題に直面しなくても改善できるはずです。たとえば、音楽ファイルの安価なダウンロード販売が一般化するだけでも、状況はかなり変わるのではないでしょうか? 年金未納者の強制徴収をいかに厳しくしても年金制度が生き残ることはないように、著作権法違反の取り締まりをいかに厳しくしても(そういえば、今度はgameonlineが逮捕されましたね)、そんなのはいかなる本質的な変化にも繋がらないように思います。
■
余談ですが、上記の1-bについて。この立場をとった場合、データの複製可能性を前提とする以上著作物そのものには課金できないわけですから、極論として二つの可能性が出てきます。ひとつは、(1-b-1)著作物の流通を徹底して管理し、アクティベーションなどを駆使して鑑賞行為のほうに課金する。いわゆる「知覚権」というやつですね。そして、もうひとつは、(1-b-2)著作物の流通とは別にカネの流通を確保する。47氏のいう「デジタル証券システム」はこの一種です。前者は絶対的なネットワーク管理を必要とする息苦しい世界ですが、後者はあらゆる著作物が投機対象になってしまうウサンクサイ世界です。どちらがいいか、というのは、なかなか難しいですね。
Winny開発者逮捕2
カテゴリー[critique]投稿日時: 2004年05月12日07:48
おはようございます。
朝起きた途端に、今度は下記のようなさらに衝撃的なニュースが目に飛び込みました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040512-00000001-kyodo-soci
これはさすがにひどい。Winnyを使っての違法コピーでも、Winnyの開発ですらなく、配布そのもの、ひいては存在そのものを非合法化しようとしている。これはもはや、個別Winnyの問題ではなく、P2Pの理念そのものへの攻撃だと考えるべきです。ネットでは、「今回騒いでるのはny使ってエロゲーとか落としてたやつばかりで、P2P全体の将来には関係ない」という意見もありましたし、実際に当初そういう側面が強かったことは否定できないですが、こうなってくるとさすがにそれでは片づけられないと思います。
なお、知るひとぞ知るように、47氏は「デジタル証券システム」という新しい著作権システムを提案したことでも知られています。僕はある理由からこのシステムを支える哲学には大きな疑問があるのですが(それは僕が鈴木健氏のPICSYに、大きな関心をいだきつつ疑念を抱いているのと同じ理由です。これもまたそのうち)、それはそれとして、野心的な提案であったことは間違いない。ところが、そのような試みすらも、現状の捜査では
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040511-00000207-yom-soci
と報道されているように、違法性の根拠として使われようとしています。これはただちに言論統制というわけではない。とはいえ、「いまの著作権制度は古い」といった発言を萎縮させる効果があることは間違いない。そして、警察もそれは分かっているはずです。こんなことが許されていいのでしょうか。
■
Winnyの利用者は100万人以上だと推定されています。つまり、アンダーグラウンドなハッカーがどうこう、というものではなく、大衆的なメディアなのです。他方、著作権の被害というのは、傷害事件と異なり明確に算出できるものではありません。Winnyを通してあるアルバムが10万人に流れていたからといって、Winnyがなければその10万人が定価でアルバムを購入したかといえば、決してそうではないからです。むしろ、Winnyは、彼らにそれまで知ることもなかった楽曲に触れる機会を与え、カラオケや着メロに誘導することで全体的には市場を広げていたのかもしれません。これは、いまのところ、だれにも分からないことです。そのような状況で、もし現行の著作権法が100万人もの人間をいつでも犯罪者にすることができるようなものなのであれば、そんなのは法律のほうが間違っているに決まっています。
著作権法は人間が作ったものです。したがって変えることもできます。そもそも、著作権法は、印刷や録音や映画のような新しいテクノロジーが登場するたびに、つぎつぎと形を変えてきたものなのです。僕たちは、いまこそ、現状の著作権制度は古いし、それを支える流通制度も古いし、新しいテクノロジーを用いた変革が必要なのだ、と大きく声を挙げるべきです。
【追記】
僕のGLOCOMでの同僚の石橋啓一郎氏が、Winnyの功績について整理しています。Winnyユーザでなくとも頷けるニュートラルな議論になっていると思いますので、リンクしておきます。参考にしてみてださい。
Winny開発者逮捕
カテゴリー[critique]投稿日時: 2004年05月10日11:23
おはようございます。5月9日で33歳になった東浩紀です。今年もよろしくお願いします。
■
さて、みなさんもすでにご存じかと思いますが、Winnyの開発者「47」氏が逮捕されました。
http://www.asahi.com/national/update/0510/004.html
ポスト2ちゃんねる的な匿名コミュニケーションの場としてP2P掲示板の可能性が謳われていた時代もありましたが、これでその可能性は文字どおりなくなったわけです。開発者まで逮捕されたということは、Winny摘発に対する警察の並々ならぬ情熱を示しています。今後、日本では、匿名的なファイル交換ソフトを開発するひとは出てこないでしょう。
なんか、ここまで事態が進展してくると、匿名性の価値云々みたいな原理論をたてるのも空しくなってきて悲しくなるばかりです。それに、日本では、そもそも問題の出発点が、匿名性とかセキュリティとかですらない。テロリストがWinny掲示板で連絡を取り合ってデカい事件を起こしたとか、小児性愛者のグループ(このあいだフランスで大きな集団が逮捕されましたが)がWinnyでサンプルファイルばらまいてエロビデオのシンジケートを作っていたとか、そんな社会的事件が起きたのならともかく、またもや口実は著作権です。
いまや著作権は、インターネット規制を推進するときのマジックワードになっている。ネットだけじゃない。最近話題のレコード輸入権問題もそうです。グローバル化と情報化のなかで、新しく誕生し、既存の産業構造を脅かす情報流通がつぎつぎと生まれている。他方で、その流れをコントロールする口実として、著作権が使われ始めている。しかし、自分自身も著作権でメシを食っている人間としてあえて言いますが(僕は研究機関にも所属していますが、主な収入源は印税と原稿料です)、著作権ってそんなに万能なものでしょうか?
■
5年くらい前、ネット時代の三大悪として、ドラッグとテロとチャイルドポルノが挙げられているのをどこかの本で読んだことがあります。当時の僕は、ポルノとテロが同じレベルで並べられているのに驚いたものですが、最近では、レッシグも言うように、ポルノの制作どころか、音楽ファイルのコピーすらテロ並みの社会悪として扱われるようになっている。
しかし、そんなのは、旧態依然の音楽産業や映画産業が作り出したレトリックにすぎない。新しいテクノロジ-が生まれたのなら、新しいタイプの著作権管理、新しいタイプの課金システムを考えていくことこそ必要であって、その新しいテクノロジーを無闇に犯罪化してもそんなシステムが長続きするわけがない。ましてや、その新しさに挑戦するソフト開発者を逮捕するなど論外でしょう。
だいたい日本は、音楽も映像もネットで自由に聴けないし見られない。韓国のドラマなんて、一話300円ぐらいでがんがんやっているわけです。そういう選択肢がないうえに、CDやDVDはべらぼうに高い。たとえば最近僕は、「24」シーズン2のDVD-BOX英語版(Region1)を買いましたが、全24話で7500円。日本語版は今月末に出るけど20000円。この価格差は何なんだ? アニメのDVDだって、一部のオタクを相手にしているためかメチャクチャに高い。攻殻機動隊SACなんて、全巻揃えたらいくらになるんだか。こういう状況が、違法コピーを後押ししていることはだれが見ても明らかでしょう。
著作権法違反は違反として、厳罰に処するべきでしょう。しかし、新しいテクノロジーとの共存を模索しないのは単純に間違いだし、いつまでも消費者をだまして高いものを買わせられると思うのも間違いです。
■
【追記】
金子氏(47氏)本人は違法性を認めた、と報道されています。
http://www.sankei.co.jp/news/040510/sha054.htm
しかし、僕は、このような逮捕は、結果的にP2Pソフトの開発そのものを非合法化するものであり、そのことによる文化的、社会的損失は計り知れないと考えます。それに、Winnyの流布が著作権法違反幇助だというのならば、サービスプロバイダも何もかも全部幇助じゃないでしょうか。Yahoo!BBにしてもNTTにしても、トラフィックの何割がWinnyか知らないわけじゃないでしょう。
ファッションとしてのCreativeCommons
カテゴリー[critique]投稿日時: 2004年05月08日07:45
おはようございます。最近はてなばかり更新していた東です。どうも僕的にははてなのほうが性にあっているみたいなので、油断すると向こうばかり更新してしまいます。MovableTypeとはてなの使い分けは難しいですね。
さて、今日は、波状言論6月号用に椹木野衣氏と八谷和彦氏と鼎談する予定です。そのために朝からいろいろとネタ仕込みをしているのですが、その過程でヤノベケンジ氏のサイトに行きました。
http://www.salon-de-rosp.com/blog/megalomania/
ヤノベ氏は、失われた未来イメージをテーマとして継続的に興味深い活動をされているかたです。チェルノブイリ近郊の廃墟になった遊園地をアトムスーツで彷徨う、というプロジェクトを最初に見たときの衝撃は忘れられません。最近も大阪万博のエキスポタワーを題材に刺激的な作品を作られています。八谷さんや村上さんとともに、僕がリスペクトしている美術作家のひとりです。上記サイトでその魅力は十分に堪能できるので、みなさんもぜひ覗いてみてください。
■
……のはいいのですが、このサイトにはちょっとした問題があります。各ページのサイトの下にはCreativeCommonsのバナーが張られ、そこには「No Rights Reserved」と書かれている(つまり、もっとも強いタイプのCCライセンスが選ばれている)のですが、そのすぐ下には、「Copyright (C) 2003 Salon de Rosp Co.,Ltd. All Rights Reserved. 」と「作品の著作権はヤノベケンジに帰属します。全ての画像・キャプション等の無断転載を禁じます。」というまったく正反対の注意書きが記されているのです。
いったい、このサイトは、No Rights Reserved なのか All Rights Reserved なのか? 文章や画像の二次使用を認めているのかいないのか? まあ、認めていないと考えるのが適当でしょう。つまり、CreativeComonnsのバナーは、単に格好よさそうだから張られているだけなのです。
おそらくこれは、サイト制作者の方が、MovableTypeの設定であまり深く考えずにCreative Commonsの導入を決めたうえで、さらに深く考えずに商用サイトにありがちな注意書きをコピぺしたことによって生じたミスだと思います。したがってこの問題をこれ以上追究してもしかたないのですが、こういうミスが、マイナーな個人サイトだけではなく(そのレベルではこの手の混乱はありふれています)、日本を代表する美術作家のサイトにまで見られるのは問題です。ヤノベ氏の作品はヴィジュアル的にもインパクトが強いので、もしそれが本当にCCで公開されていたら、創造性を刺激されるひとも多かったことでしょう。それだけに、そこでCCのバナーが単なるファンションとして消費されているのは、残念でなりません。日本における、CreativeComonnsに対する意識の低さ(そして、僕も含めた、関係者の啓蒙努力の少なさ)を象徴する事例だと思います。
■
僕はいままでCCにあまり肯定的に言及してきませんでした。レッシグの本は一昨年から昨年にかけて話題になりましたし、僕が所属するGLOCOMがCCjpをホストしていたり、ICCがシンポジウムを開いたりと、仕事的にはかなり関係があったにもかかわらず、です。その理由は、昨年あたりの状況では、CCの理念は、日本ではこういうかたちで「舶来の格好いいもの」として消費されるだけだろうと予測していたからです。実際、CCの名前だけは拡がったようですが、実態はいまでも上記のような状況です。ネットで話題になることも何となく少なくなってきました。
しかし、こうなってくるとあえて言いたくなるのですが、CCの理念はもう少し真剣に受け止め、長期的に取り組むべきものです。だとすれば、いまこそ、業界ノリで短期的な話題作りをしたり、「公式ライセンス」の発表で満足するのではなく、著作権に頼って生活している個人(たとえばヤノベさんはそのひとりでしょう)が本気で取り組みべき選択としてCCの理念を訴えて行く、地味な啓蒙活動が必要なんじゃないでしょうか。それはもはや、レッシグ自身の意向とも関係ありません(レッシグ自身は、CCのグローバルな展開のために、マスコミでの話題づくりを望んでいるのかもしれません)。日本のネットは、もともと、彼の理念を草の根レベルで展開するのに適しているのです。僕が念頭においているのは、コミケとかパロディとかFlashとかのことですが、それはまたそのうち書きます。
そういえば、一時期はてなで盛り上がっていた萌えクリ本の企画とか、どうなったんでしょう。ああいうのに期待していたのですが。