kajougenron : hiroki azuma blog
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ここは、批評家・東浩紀が運営するブログです。東浩紀の経歴や業績については、hiroki azuma portalをご覧ください。
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blog entries at 【2008年06月】
6/12朝日新聞秋葉原記事
カテゴリー[critique]投稿日時: 2008年06月25日14:57
6月12日の『朝日新聞』朝刊に掲載された、ぼくの秋葉原無差別殺傷事件についての文章を転載します。asahi.comでの掲載はすでに終了しています。
文章は掲載原稿と完全に同じですが、タイトル、見だしなどは省略しています。新聞掲載の原稿では、一般に見出しは新聞社がつけるものであり、ぼくには文責がないからです。
なお、余談ですが、この原稿、掲載時に、「ついに起きたか」とは後出しジャンケン的な卑怯な発言だとか、「どうせなら経団連とかではなくて朝日新聞に突っ込めと煽れ」とかいう意見がネットで多数見受けられましたが、じつはぼくのところにこの原稿依頼が来たのは、この事件のわずか2週間ほどまえに、ぼく自身が、現実と虚構の区別がつかなくなった主人公が朝日新聞社に車で突っ込んで書評委員を実名で手当たり次第に殺すという小説(『キャラクターズ』)を出版していたからなのでした。むろん、原稿ではそんな文脈にはいっさい触れませんでしたが(ぼくの小説など世間的にどうでもいい話ですから)、いずれにせよ、ぼく自身としては、そういうわけで事件に接して特殊な感慨を抱く必然性はあったわけです。そして、彼が朝日新聞社ではなく秋葉原に突っ込んだという事実を前に、いささか自分の想像力の限界を感じたりもしました。
ただ、この機会に断言しておきますが、ぼくのこの文章は、決してテロを煽っているものではありません。むしろ、そう読まれたことのほうが怖ろしいです。というわけで、この数日後に書いた産経新聞の原稿では少し力点が変わっています。
余談が過ぎました。以下原稿です。
■
去る八日、買物客と観光客で賑い、アニメ・ゲーム文化の中心地である東京・秋葉原で残虐な事件が起きた。死者七人を出した無差別殺傷事件である。
筆者は一報を自宅でネットで知った。第一印象は「ついに起きたか」だった。
むろん、事件発生を予想していたわけではない。しかし最近の秋葉原については物騒な報道が相次いでいた。パフォーマンスが過激になり、規制強化が囁かれていた。
他方で若い世代のあいだでは、日本社会への絶望や不満が急速に高まっていた。昨年の論壇の話題は「希望は戦争」と語る若手論客の登場だった。そして、アキバ系と言われる若者文化の担い手と、絶望した労働者やニートの層は、意外と重なっていた。
つまりは、いまや若者の多くが怒っており、その少なからぬ数がアキバ系の感性をもち、しかも秋葉原が彼らにとって象徴的な土地になっているという状況があった。したがって、その街を舞台に一種の「自爆テロ」が試みられたという知らせは、筆者にはありうることだと感じられたのである。
筆者はいま「テロ」という言葉を使った。多くの読者は違和感をもつだろう。テロといえば普通は、何らかの政治的主張を伴った、強い信念のもとでの行動を意味する。今回の凶行にそんな主張があったのか、と。
確かに通常の意味での政治的主張はない。容疑者はネットに大量の書き込みを残している。そこには身勝手な劣等感ばかりが綴られている。社会性のかけらもないように見える。
しかし、逮捕後の調べのなかで、容疑者が職場への怒りや世間からの疎外感を長期的に募らせたうえで、計画的に凶行に及んだことが徐々に明らかになってきている。そこに窺えるのは、未熟なオタク青年が「逆ギレ」を起こし刃物を振り回したといった単純な話ではなく、むしろ、社会全体に対する空恐ろしいまでの絶望と怒りである。不安定な雇用に悩んでいたという報道もある。
容疑者は彼の苦しみを大人の言葉で語らなかったかもしれない。怒りの対象も曖昧だったかもしれない。彼が凶行の現場として秋葉原を選んだのは、おそらくはその曖昧さのためだ。もし彼が首相官邸や経団連本部に突っ込んでいたら、だれもがそれをテロと見なし、怒りの実質に関心を向けただろう。彼はその点でいかにも幼稚だった。無辜の通行人を殺してもなにも変わるわけがない。しかしその幼稚さは、怒りの本質には関わらない。だから、筆者はこの事件をあえてテロと捉えたいと思うのだ。
容疑者はむろん厳罰に処すべきである。犯罪の計画性と残虐性は明らかであり、情状酌量の余地はない。また、このような事件は二度と起きてはならず、容疑者を英雄視することは許されない。ネットの一部では共感の声が現れているが、それこそ幼稚と言うべきだ。
しかし、テロリストを厳正に処罰することと、テロが生み出される背景を無視することは異なる。私たちは彼のような「幼稚なテロリスト」を不可避的に生み出す社会に生きている。犠牲者の冥福のためにも、その意味をこそ真剣に考えねばならない。
渋谷マリアさんのご冥福を……
カテゴリー[misc]投稿日時: 2008年06月23日11:18
ぼくの15年前からの友人であり現代音楽家の渋谷慶一郎さんの奥様、マリアさんが30歳の若さで亡くなってしまいました。ここに渋谷くん自身の言葉が記されています。
去る土曜日の夜、マリアさんのお別れ会に出席してきました。渋谷くんは号泣していました。
ぼくはマリアさんとは数度しか会ったことがありませんが、とても魅力的な女性でした。ちょうど彼らが結婚した時期が、ぼくと渋谷くんのあいだに付き合いがなかった時期だということもあり、会うたびに「なんで慶一郎なんかと結婚したの?」と冗談で言っては渋谷くんにこづかれていたものですが、もはやそんな冗談も飛ばせないわけです。
マリアさんのご冥福を心からお祈りするとともに、渋谷くんがこの死の衝撃を乗り越え、強く生き続けていけるように友人として力を貸していきたいと思います。
■
このわずか一月のあいだに、このブログで「ご冥福をお祈りする」と記したのは3度目です。ちょっぴり暗くなりますね。
7/5表象文化論学会続報
カテゴリー[misc]投稿日時: 2008年06月23日10:31
標題の学会でのシンポジウム、パネラーの中原昌也氏が出席を取りやめたとの連絡が一週間ほどまえにありました。
中原氏欠席の理由は明らかにされていませんが、噂は伝わってきています。この世界は死ぬほど狭いんで、すぐ噂が立ちます。いまからでも遅くないから、ぜひ出席しましょうよ!>中原さん というか、ぼくも中原さんがいないと楽しくないって……。
もしこのブログを読んでいたら、ぜひ連絡ください。なんならケータイにでも。
腰痛になりました&もろもろ
カテゴリー[critique]投稿日時: 2008年06月21日17:09
こんにちは、東浩紀です。
もともと締め切りやイベントが重なっていたところに秋葉原で事件が起きてしまったため、先週から今週にかけては、たいへんハードな修羅場になっていました。さまざまなひとに、メールの返信などで不義理をしています。すみません。。
その修羅場、いまいったん落ち着いているのですが(それでも月曜日にまた締め切りがくる!)、そうしたら今度は容赦なく腰痛がやってきました。いまはデッキチェアからノーパソで更新しています。今晩もどうしても出かけねばならないというのに・・・・。
■
そんな感じですが、去る月曜日の「思想地図」シンポジウムにはみなさん、ご来場ありがとうございました。大盛況かつ大成功でした。
ぼくは個人的には、シンポジウム本編の盛り上がるも去ることながら、打ち上げ会場で、お会いして10年来の宮台さんと、鼎談などの場以外ではじめてゆっくりと長時間お話できたので、それが素朴にうれしかったです。——とか書くとまた論壇プロレス的に解釈されそうな気もするのですが、本当にそうだったのであえて素朴に記しておきます。打ち上げでは妙に楽しげな集合写真を撮影したので、それはのちにアップします。確か、あのときアップしてもいいかと言ったら、みんなOKを出してたので。
そうそう、その打ち上げ会場にもいらしていた大澤信亮さんから、「ロスジェネイベント、東さんのブログでも宣伝してくださいよー」と頼まれてしまいました。実際、会場でボコボコにされそうなのでこちらでは触れるにとどめていた、という嫌いがないわけではない——のかもしれません(笑)。というわけで宣伝を。
○
ロスジェネ創刊イベント「言論空間に挑む新雑誌」
6 月27 日(金)19:00 開演(18:30 開場)
於 東京・紀伊国屋新宿南店サザンシアター
〈第1部〉出演者
・浅尾大輔、雨宮処凛、増山麗奈
〈第2部〉出演者
・赤木智弘、東浩紀、大澤信亮、萱野稔人、杉田俊介
詳細はこちら。
○
とのことです。ぜひご来場を!
■
あとは秋葉原事件関係続報です。産経新聞への寄稿が掲載されました。ここです。
秋葉原事件関係では、いろいろ取材を受けましたが、雑誌コメントのひとつが編集方針で掲載されず、テレビ取材がひとつ先方との意向があわず断り、あと別のテレビインタビューが収録2時間前に突然キャンセルされました。全体的に、メディアが求める犯罪像、犯人像とぼくが考える像はずいぶんと異なり、そういう点では「勉強」になりました。
そこで思ったことをひとつだけ記せば、「心の闇」という言葉は、いまや排除社会・リスク社会の便利な「管理ツール」なのですね。
ぼくたちの社会は、もはや犯罪に社会的な意味を求めていない。もっと正確にいえば、犯罪というイレギュラーなできごとを契機として議論を立て、イレギュラーをレギュラーのなかに包摂し、社会の全体性や正常性を回復しようという意志がない。必要なのはそういうイレギュラーを局所的に管理するツールであり、そのとき犯罪の原因を無駄に探究せず、ブラックボックスをブラックボックスのまま扱える「心の闇」という言葉は、じつに便利で効率的なわけです。そして、メディアもそういう大衆の直感にみごとにしたがっている。まあ、確かにポストモダン社会というのはそういう社会なわけで、なるほど、この点だけとっても1989年(宮崎事件)や1995年(オウム事件)とはずいぶんと言論の光景が違うのだな、と思いました。
事件の被害者の方々のご冥福を心から祈るとともに、秋葉原が以前のような活発な町に戻ることを望みたいと思います。
秋葉原関係追加
カテゴリー[misc]投稿日時: 2008年06月13日16:20
秋葉原事件関係追加です。
・宮台真司さんと神保哲生さんの「マル激・トーク・オン・デマンド」の特番に出演してきました。詳細はこちら。土曜日夜の配信だそうです。
・TBSブロードキャスターのインタビューを受けます(これからスタジオに行ってきます)。土曜日夜10時からの放送で使われる予定とか。
・産経新聞より寄稿依頼を受けました。掲載は来週。朝日新聞への寄稿とは異なった角度で書くよう努力します。
・ちなみに、その朝日新聞への寄稿はasahi.comにも掲載されました。ここで読めます。
もろもろ告知
カテゴリー[misc]投稿日時: 2008年06月12日01:40
妙に忙しくなってきたので、もろもろ五月雨式に告知しておきます。思いついたものだけ書くので、あとで別エントリで補足するかもしれません。
ほか、告知を忘れたまま数ヶ月経っているものもあるのですが、それもいつかまとめておきます。とりあえずはいまは、近々の仕事だけです。イベントと秋葉原事件関係は外してあります。
衆議院議員からネットスターまで、ということで、いささかぼくもしっちゃかめっちゃかになってきました。
■
・来月号(8月号)の『新潮』に小説「ファントム、クォンタム」の第2回を掲載します。80枚か90枚くらいです。SFっぽくなってきました。政治小説っぽくもなってきました。この小説、全部で「序章」「1章」「2章」「終章」の構成なのですが、今回は「1章」の前半部分にあたります。
・同じく来月号(8月号)の『文學界』で短い評論の連載が始まります。15枚くらいです。仮のタイトルは「ゆるく考える」。「ゆるく考え」ているので、タイトルは変わる可能性があります。
・来月号(8月号)の『現代』で、「出身高校を語る」みたいな企画(「同郷・同好・同朋を語る 受け継がれる志」)で、経済学者の金子勝氏、衆議院議員の後藤田正純氏と3人でグラビアに登場しています。おふたりがスーツなのに、ぼくはひとりシンガポールで買ったリゾート服で、KYが炸裂しています。
・いま発売されている『ミステリーズ!』(vol.29)に「セカイからもっと近くへ!」第4回を書いています。新井素子編の第3回にして最終回です。
・同じく新井素子さんについて。彼女の『ひとめあなたに……』(創元SF文庫)に解説を寄せています。僕的には一生懸命書いたんですけど、なんか一部読者に力を抜いたと思われているようです(泣)。ああいうエッセイはエッセイで、書くのたいへんなんですよ。
・いま発売されている『SIGHT』に「東浩紀ジャーナル」第9回が掲載されています。上野千鶴子氏の『おひとりさまの老後』論というか、一種の批判です。これに対する上野さんからの反論が次号の『思想地図』に載るとかいう話が進んでいて、ぼくはビビってます。
・東京オペラシティアートギャラリーで開催される予定の現代美術展「トレースエレメンツ」のカタログに寄稿しました。ひさしぶりに「ベンヤミン」とか書きました。5000字くらいです。
・『網状言論F改』が、発売から5年を経てなんと増刷(3刷)になりました。GJ!青土社さん、ですね。
・『思想地図』第2号用の論文公募ページが開設されました。こちらです。じつは創刊記念でぼくと北田さんの対談とかウェブ用に収録していたのだけど、そちらはいっこうに公開される気配がありません。イベントそのほかで編集部は忙殺されている模様です。
・『ゼロアカ道場』第2回の様子および第3回関門の課題などが発表されています。こちらです。
・声優の柚木涼香さんとのネット番組「柚木涼香と東浩紀の動物化してもいいですか(はあと)」が始まります。番組トップページはこちら。予告編などあります。
・上記に関連して。NHK-BSの番組「ザ☆ネットスター!」の本サイトおよび附属サイト(ねとすた☆あねっくす)に行くと、放送でカットされた場面とか、反省会とかいろいろ動画がアップされています。いちいちリンクしませんので、探してみてください。
・『R25』のいずれかの号で「思想地図」について取材を受けました(掲載号把握していません、もう出たのか??)。コメントが掲載されています。
・あとは、前にも告知した『ユリイカ』最新号のマンガ批評特集。これは繰り返す必要はないですね。
・あ、そうそう、『キャラクターズ』も発売されてますよ! 一部書店にはぼくの手書きポップも立っているはずです。普通に娯楽小説として読めるようになっているはずなので、みなさんぜひぜひ読んでくださいね。
……といったところです。
朝日新聞そのほか
カテゴリー[misc]投稿日時: 2008年06月11日12:46
秋葉原無差別殺傷事件について、朝日新聞に寄稿しました。明日(12日)の朝刊に掲載される予定です。
ほか同事件について、『フライデー』と『週刊プレイボーイ』よりコメント取材を受けました。それらも最新号に掲載予定です。ニュースウォッチ9では、昨日(10日)に9日収録のインタビューの別の部分が放映されました。
告知まで。
ニュースウォッチ9
カテゴリー[misc]投稿日時: 2008年06月09日18:13
秋葉原連続殺傷事件について、NHKのニュースウォッチ9より取材を受けました。本日9時からのニュースで流れるのかもしれません。
今回の事件はまったく痛ましい事件であり、ぼくは犯人は断固厳罰に処すべきだと思います。その点に同情の余地はありません。しかし、その前提のうえで、この犯人が胸に秘めていた怖ろしいまでの怒りというか、復讐心や屈辱感みたいなものについては(もしそういうものがあったとすれば——現時点での情報で判断するかぎりぼくはあったと思うのですが)、単に犯人個人の異常性格として片付けるのではなく、そういう感情が存在することの意味を真剣に考えなければならない、という話をしてきました。
ちなみに、じつはその取材の直前まで、同じ場所で柚木涼香さんとのネット番組を収録していました。まったくノリが違うので、頭の切り替えに微妙に時間がかかりました。。。