初出:『論座』2000年6月号、朝日新聞社(初出時のタイトルは「コンピューター文化なき日本」)
注釈執筆:山根信二、林智彦(『論座』編集部)
山根信二(やまね・しんじ)
岩手県立大学ソフトウェア情報学部助手。東北大学情報科学研究科博士後期課程修了後、4月から現職。ハッカー倫理とオープンソース運動などを研究主題にし、ネットワーク上のさまざまなボランティア運動に取り組んでいる。→個人ウェブサイト
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山根 手口については、事件当初から、大体見当がついていました。また事件後に、そのときのサーバーがどういう欠陥を持っていたのかが報道されましたが、要するに新しい手口ではなく、インターネット上のいたるところで配られているツールを使えば、中学生でもできるものでした。 これほど初歩的なレベルの侵入を許したということは、日常のマニュアルづくりが根本からなっていなかったということです。JCOがバケツで臨界事故を起こしたのと同レベルで、こんなにずさんだったのか、というのが第一の感想でした。 山根 主に「バッファオーバーフロー攻撃」と呼ばれる方法で、要するにコンピュータに規格で想定されている以上のデータを送りつける。場合によっては自分の仕込んだ命令を実行させる、場合によっては機能を停止させることによって、不正侵入を可能にするものです。どのソフトに欠陥があったかはすでに知られており、侵入されるまで担当者は欠陥商品を使い続けたわけです。 山根 そうですね。ですから、日本のケースはクラッキングとか攻撃とかいうレベル以前のもので、単にやられたほうがずさんだったというだけのことです。同じころ起きた、アメリカの事例とはまったく違います。ヤフー、アマゾン・ドットコムなどが機能停止に陥った事件では、「DoS」攻撃という手法を大量に動員した「DDoS」という手法が使われました。 DoS攻撃というのは、サーバーに対して処理能力以上のリクエストを出すことで、正常なサービスを行えないようにするものですが、今回のケースでは、大学や公共機関といった一般に公開されている複数のサーバーにこのプログラムをあらかじめ仕込み、いっせいに作動させたようです。アメリカの大手のサイトでは、DoS攻撃に対しては事前に対処していたのですが、ネットワーク各地からデータを同時に送られて機能不全に陥った。いまのところ、どうして多くのサイトにその攻撃プログラムが仕込まれ、結果的に共犯者になってしまったのかはあまり問われていません。攻撃されたことにばかり関心が集まっていますが、ネットワーク社会のセキュリティーの甘い部分が、知らない間に攻撃に手を貸したのだということを忘れてはならないと思います。 DDoSについては、現時点では処理能力に余裕を持たせる以外は「やられたらどうしようもない」という感じです。一カ所からの攻撃ならば、サーバー側で防御できますけど、数カ所からやられてしまったら、いったんサイトを閉じるしか手がありません。しかし、攻撃の前段階としてプログラムを仕込まれる乗っ取りに対しては、既知の欠陥を修復することで対処できます。知らない間に共犯者にならないためにも、運営者が日常的にメンテナンスをする体制が必要でしょう。 |
ハッカーとクラッカー hacker / cracker インターネットの共有文書「RFC」の「インターネットユーザー用語集」によれば、hackerとは「システム、特にコンピューターやコンピューターネットワークの内的な働きを深く理解することに喜びを覚える人」。crackerとは「コンピューターシステムに権限を持たないのにアクセスしようとする人物」であり、「これらの人物はしばしばハッカーとは対照的に悪意を持っており、システムに侵入する多数の手段を駆使する」。このように両者は別の概念である。crackerは不正侵入者とも訳される。ハッカーの業績が知られるにつれ、ハッカーを自称するティーンエージャーが後を絶たない。 CPSR 社会的責任を考えるコンピューター専門家の会(Computer Professionals for Social Responsibility)の略称。80年代初頭にゼロックス社のパロアルト研究所(PARC)のコンピューター研究者が集まって設立した非営利団体。初期はコンピューターを利用した核戦略に対して信頼性とリスクの面から批判運動を展開した。コンピューターへの無知・過信に対して冷静な議論を提供し、ハッカーに対するヒステリーや暗号配布制限といったコンピューターネットワーク関連の問題も扱っている。 SETI@home SETI(地球外の知的生命体を探査するプロジェクト)の1つで、200カ国190万人が参加している史上最大の計算プロジェクト。家庭や職場のコンピューターが使われていないときに専用プログラムが自動的に作動し、インターネットで配布されている電波天文台の受信データの信号解析を行う。もしも自然界に存在しない信号が発見されれば、さらに精密に解析される。 例の官公庁サイト事件 2000年1月24日、科学技術庁のホームページが書き換えられたのを手始めに、総務庁、運輸省などのサイトが次々と不正侵入された事件。侵入事件は2月まで続き、このほかに、総合研究開発機構(NIRA、経済企画庁のシンクタンク)、政府資料等普及調査会(総理府の外郭団体)、郵政省沖縄郵政管理事務所、基盤技術研究促進センター(通産・郵政省所管)、科学技術振興事業団(科学技術庁所管)、自動車事故対策センター(運輸省所管)、国立身体障害者リハビリテーションセンター、宇宙科学研究所、NHK関連企業グループ、国際観光振興会など、外郭団体、関連団体も被害にあった。文部省、大蔵省、農林水産省、労働省、防衛庁、日銀、最高裁、人事院のサイトも不正アクセスを受けていたことが明らかになったが、いずれも侵入は失敗に終わった。 ヤフー、アマゾン・ドットコムなどが機能停止に陥った事件 2000年2月7日から9日にかけて、Yahoo!、Buy.com、eBay、CNNなどアメリカの8つの著名サイトがクラッカーの攻撃にあい、相次いでサービス停止に追い込まれた事件。攻撃されたサイトがいずれも有名で、防御システムも高いレベルにあると思われていたため、米社会に与えた衝撃も大きかった。分散型サービス拒否(DDoS)攻撃という手法が使われた。著名サイトへの侵入事件はこの後も断続的に続き、26日には捜査にあたるFBIのウェブサイトも書き換えられた。4月19日、カナダ在住の15歳の少年が容疑者として逮捕・起訴された。 |
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山根 インターネットで自覚的な人はすでに強力な暗号を利用しているので、インターネットで盗聴され放題になるのは無力無自覚な人だけですよ。それはともかく「やられたらやりかえせ」というのは、国民が国家の情報を収集してやろうという市民オンブズマン的な発想にもつながりますね。それはそれで必要だと思います。 ハッカーというのは、ある歴史と文化を共有しているコンピュータ開発の初期に生まれた人種のことです。彼らがハッカーと言われるゆえんは、その手口、手並みにあったわけですね。計算機の限界を超えるような性能を引き出して、それまでできなかった機能をつけ加えた。だから、ハッカーというのは、その技量で評価される。したがって、技術的に稚拙なものは、やはり私はハッカーと認めないんですよ。「ハッカー気取り」というやつですね。ハッカーというのはその腕前で評価されてなんぼ、というごまかしのきかない世界です。 今回の件がハッカーの仕事であったかどうかについては、義賊だとか革命的思想を持っているかどうかとは別の技術的問題でしょう。今の東さんの言い方は、ハッカーの定義を広く取っている、あるいはひどくロマンチックに取っていると思うんです。ハッカーは革命家だ、ハッカーというのはあらゆる制約から自由である、ととらえる見方ですね。ここに見られるのは、ハッカーがロマン化、ファッション化される傾向です。 つまりハッカーという言葉が、現実と関係ないイメージの、一種の通り名のようになってしまっている。元の文化がなおざりにされてしまっているのは、やはり問題ではないか。 人文系の人は、同じロマン化でも「黒人がカッコいい」という言い方の不当性には敏感ですけれども、「ハッカーがカッコいい」というのには、なぜかシンパシーを覚えてしまうようなんですね。これが私には、非常に不思議なところです。 |
犯人と称する人物のインタビュー 中国広東省の日刊紙『広州日報』」は2月17日、日本の官公庁サイト侵入事件の犯人を名乗る人物とのネット上の単独インタビュー記事を掲載した。この人物は、総務庁と科学技術庁のウェブサーバーへの侵入は自分が単独でやったとし、犯行時間や方法を述べたうえ、動機は歴史認識をめぐる日本への抗議を示すためだと強調。同紙は「中国ハッカーの自白」との見出しで伝えた。 ハッカーというのは、その技量で評価される 「もう一度いいますが、ハッカーになるためにはハッカーらしい思考方法を身につけなければなりません。コンピューターの前に座っていない時にもハッカーになるためにできることがいくつかあります。次のようなことはハッキングの代わりにはなりませんが(何事も)、多くのハッカーがそうしていますし、ハッキングの真髄に本質的に通じるものがあると思います |
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山根 そうですね。レビーの本はそれらのエピソードをつなげて、リチャード・ストールマンがハッカー文化の生き残りとしてフリーソフトウエア運動をはじめるところで終わってます。 山根 83年という年は、自分たちが社会からどう見られているかにハッカー自身が気がついて、愕然とした年だと言えると思います。 |
リチャード・ストールマン Richard M. Stallman 企業によるソフトウエアの独占を排し、公開・共有を旨としたソフトの配布・普及を目指すGNU(グヌー)プロジェクトの主唱者。Free Software Foundation(FSF)はその推進団体で、無制限のコピーを保証する配布規約をGPL(GNU Public License)という。そのラジカルな主張は、しばしば私有を認めない共産主義だと評されたりする。リナックスはGPLに基づいて開発・配布された。 |
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山根 東さんがおっしゃったことと少し重なりますが、ハッカーの社会的理解を語る上で見逃せない作品を二つほど指摘できます。 一つが、ジョセフ・ワイゼンバウムというMITのコンピュータ科学の教授だった人が七六年に書いた『コンピュータ・パワー:人工知能と人間の理性』(邦訳はサイマル出版。絶版)という本です。 彼はそこで、コンピュータによる非人間的な社会というのを警告するために、ハッカーを例に使ったんです。彼らは朝から晩まで20時間もぶっ通しでコンピュータの前に座っている病的な人種だとか。 それまで利用時間を割り当てられていたコンピュータを拡張して、複数の端末から対話的に作業するという環境(タイムシェアリング環境)は、まさにハッカーが初めてつくったものですから、オンラインでずっと計算機にへばりついて作業するというのは、ハッカー以外の人から見れば、それまで(ひょっとしていまでも?)見たことのない、まさに異様な人種に見えたわけです。 この本は九〇年代にもペンギンブックスで復刊されましたが、その後のハッカー理解に決定的な影響を及ぼしています。たとえば、この本を元にして、心理学雑誌「サイコロジー・トゥディ」がハッカーの病理についての特集を組んだことがある。 そして次が、東さんが言っておられた83年の「ウォー・ゲーム」。実は「ウォー・ゲーム」には「ハッカー」という言葉は一度も出てこないんです。 山根 単に、イケてない高校生が陰謀に巻き込まれるという話なんですが、この映画が公開されたのと同じ年に、映画をなぞったような事件が起こるんです。「ミルウォーキー414」という自称ハッカー集団が、電話サービスを停止させて摘発されたんですね。そのとき、映画のイメージもあいまって、「これは国防上の危機である」ということが議会でも議論された。 冷戦構造のバランスが、思わぬいたずらで崩壊するかもしれない、そういう当時の潜在的恐怖に強烈に訴えたわけです。マスコミもティーンエージャーも、この強烈なイメージに支配されてしまった。 山根 それは正しい。実際、彼らはマスコミでは天才少年として取り上げられたわけです。 山根 たしかに、社会に不適合なコンピュータ中毒の若者、あるいは天才少年、その両極にハッカーに対するイメージというのが分かれていた。しかし、それらは同じことを別々の方向から見ているにすぎません。どちらにしてもハッカーという新しい人種がいる、彼らは我々とは異質な人間だ、というわけです。 |
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山根 技術者がインターネットでの盗聴をイメージするときは、常にデジタルのことを前提にしていましたから、一般の方がまだアナログのイメージだった、というのは実は、盲点でしたね。 |
通信傍受法 正式には「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」。骨子は以下の通り。
共産党の緒方参院議員が自宅を盗聴された事件 86年、日本共産党の緒方靖夫国際部長(当時、現参院議員)の自宅が神奈川県警によって盗聴されていた事件。緒方氏の告訴を受けて捜査した東京地検は翌年、神奈川県警の捜査員2人が盗聴に関与したことは認めたが「組織の末端の人間だから」として起訴猶予にした。緒方氏は後に国家賠償請求裁判を起こし、警察の関与を認める確定判決が出ている。 尾崎憲一氏の発言 尾崎氏は大手プロバイダー「ベッコアメ」の社長。彼は『AERA』99年9月13日号のインタビューで、「通信傍受法は一般加入電話のことを主に想定している。しかし、音声とデータ通信はまったくの別物。たとえば、インターネットにおいて電話番号に当たるものはIPアドレスだが、それは何十人何百人が共用するから、傍受しようとすると、関係のない人の通信データも見られてしまう。音声と違って、過去のものも蓄積されているので、おのずと全通信データが傍受の対象になる」と答えている。 |
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山根 専門家の言論が伝わらないということに関しては、技術者の側にも責任があります。 アメリカでは、例えばACM(Association for Computing Machinery 米国計算機学会)という学会が、法の介入に関しての特集を組んで、政府の動きに批判の論陣を張ったりしていますが、日本の姉妹団体である情報処理学会には、全然そういう動きが見られません。盗聴法に関しても、日本の学会は沈黙しました。ですから一般の人にわかりようがないといえば、わかりようがないんですね。これは問題です。 山根 技術者による技術的アプローチといえば、確かに昔から説得よりも普及、という一種の技術者の美学みたいなものがあります。例えば通信傍受法に対しても、「言論で戦うよりも、そういう盗聴ができないネットワークを普及させちゃえばいいんじゃん」と言う。でも、そこで発言するのも技術者の責任だと思うんです。 通信傍受法や官公庁クラッキングなどが社会的イシューになって、技術者のスタンスが問われたときに、技術者のほうではどう対処すべきなのか、と考えたときに私が参考にしたのは、日本の物理学者の社会的活動でした。 具体的には、80年代に起こった科学者によるSDI(戦略防衛構想)反対運動です。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を、人工衛星に積んだ人工知能が識別して、レーザー砲で撃ち落とすSDIという計画がアメリカのレーガン政権によって提案されたときに、「これは技術的に無理だ、非現実的だ」という声をあげたのは物理学者たちでした。 日本がSDI研究への参加を決めたときには、湯川秀樹のお弟子さんたちが果敢に批判の声をあげた。そこには、核時代の物理学者の使命感が多分にあった。アメリカではコンピュータ・サイエンスの世界でも運動が起きて、学会内の論争にもなったんですが、そこでの争点は核兵器に反対するか否かではなく、要求されるソフトウエアの仕様では実現不可能だという学術的議論でした。日本ではその議論は学会誌ではなく岩波の『世界』に翻訳紹介されています。 私がCPSRの日本版が必要なんじゃないかと思うようになったのは、このSDI反対運動の歴史を知ったのがきっかけなんです。これを一つのモデルとして、もう少し幅広く、コンピュータ技術全般に関する、技術者の行動のあり方にまで広げられないか。先般の盗聴法の問題は、まさにSDIと同じような問題であったわけですから。 山根 そうですね。ハッカー文化の本流が、サイバーパンクと別のところで受け継がれてきたということを示すのが、「ニュー・ハッカーズ・ディクショナリー」の記述だと思います。「ニュー・ハッカーズ・ディクショナリー」では参考文献として、『ニューロマンサー』よりもヴァーナー・ヴィンジ『トゥルーネームズ』(邦訳は『マイクロチップの魔術師』、新潮社)をまず挙げているんです。『トゥルーネームズ』はネットワーク上における匿名の人格のコミュニケーションを『ニューロマンサー』より先に主題化した作品として評価されています。『ニューロマンサー』の新しさというのは、技術の問題というよりも文体にあると思います。 |
通信品位法 Communication Decency Act 96年2月、米国で成立したネットワーク上のわいせつ表現を規制する法律。規制対象があいまいだとして翌年6月、連邦最高裁が違憲判決を下した。 サイバーパンク Cyberpunk テクノロジーを支配の道具に利用しようとする権力に対して、特殊能力や技術的知識で武装したアウトサイダーが対抗しうると考える感性ないし信条のこと。言葉自体は80年からあったが、ウィリアム・ギブソンとニール・スティーブンスンの一連の作品で一般に知られるようになった。 ニュー・ハッカーズ・ディクショナリー New Hackers' Dictionary インターネットで使われているスラング、歴史、フォークロアを集めたオンライン辞典「ジャーゴン・ファイル」(→Jargon File)の書籍版。ハッカーの考え方、歴史を知るには必携の書物。現在第3版まで出版されており、旧版はアスキー刊『ハッカーズ大辞典』として邦訳されている。 サイバースペース独立宣言 Cyberspace Independence Declaration 96年の通信法改正で通信品位法が米議会で圧倒的多数で可決されたのを受けて、ライターで電子フロンティア協会の発起人でもあるバーロウが旅行先で書き上げたのが「サイバースペース独立宣言」である。その中で彼はSF小説の「サイバースペース」という言葉を借りつつ、国家とは独立して発展してきたネットワーク社会の性格について詩的かつ英雄的に語っている。→英語版原文 |
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山根 そもそも、どうしてコンピュータ技術と現代文化が結びつき、サイエンス・フィクションが社会的問題と結びついたのか、という問いも立てられる。『ニューロマンサー』の世界とコンピュータの間に、お互いが結びつく必然性はなかったと思うんです。『ニューロマンサー』と並行している映画「ブレードランナー」は状況とは無関係に受け取られていますからね。しかしそれがたまたま結びついてしまった世界があり、それが20世紀後半のアメリカだったわけです。そう考えると、アメリカのコンピュータ技術者は、一握りの人間が科学技術で世界を救うという正統的なSFを現実に生きていると言ってもいいでしょうね。 |
リナックス Linux フィンランドの学生だったリーナス・トーバルズ氏が中心となって開発したOS。世界中の有能なハッカーたちがボランティアで開発・改良に参加していることで名声が高まり、「ウィンドウズキラー」として注目を浴びている。 オープンソース運動 90年代後半にフリーソフトウエア運動から派生した運動。フリーソフトウエア運動は、80年代からGPL(リチャード・ストールマンの項目参照)の下でのコンピュータープログラムの自由な拡張と再配布を進めてきた。それに対してオープンソース運動は、一定の定義の下に、GPLだけでなく他のライセンスを含めたプログラムの自由な拡張と再配布を展開している。 エリック・レイモンド Eric S. Raymond オープンソース運動の主唱者。「ニュー・ハッカーズ・ディクショナリー」の編集者。著書『伽藍とバザール』(邦訳・光芒社)『ノウアスフィアの開墾』『魔法のおなべ』はオープンソース運動のバイブル。 |
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山根 いつでも検索が可能であるということの中には、リアルタイムの検索だけでなくて、追跡という機能が入ってくる。 山根 データベースを基盤とした権力がどんなものになるか、そしてさらにそれが内面化されたときにどんな事態が発生するかは、現時点では予測がつかない。業者が顧客の身元情報をやすやすと流してしまうのも、その被害をイメージすることも算出することもできないことに関係があるのではないかと思っています。 しかし近い将来に予測できる危機としては、データ結合の問題が挙げられます。 山根 一人ひとりが特定できる番号によって、それまで相互に無関係だったデータを結合することができる。ジャーナリストの斎藤貴男氏が『プライバシー・クライシス』(文春新書)で実例を挙げながら問題提起をしていますね。 米国ではすでに、行政サービスを受ける際に、SSN(社会保障番号)を提示させられるようになっている。法的には提示する必要はないはずの場合でも、実際には義務になってしまっている場合が多い。民間企業も同様に番号を収集して「きめ細かなサービス」をすすめている。我々がいまだ構築したことのない国民データベースを構築するというのに、昨年の国会審議はお粗末でした。政府参考人は「ICカードの安全性に関して大きな問題が生じることはない」と言っていましたが、年末にはフランスで実用化されていたICカードがクラックされています。さらに、その手の外部犯行よりも警戒すべき内部犯行については、何の方策も示されなかった。これでは自分の過去データが流出しても、泣き寝入りしろといっているようなものです。 山根 こうした動きに対しては、対抗する技術ができないだろうか、ということをまず考えますね。通信に関してはトレースできない通信をどう実現するか、というのがサイファーパンクのテーマの一つです。我々が日常的に買い物をするように、ネットワーク上でも身分を明かさなくても買い物できる、身分は明かさなくても前に取引をした実績のある人だとわかる、そういう世界がはたして構築できるか、という課題です。 |
住民基本台帳法の改正 99年8月12日成立した改正住民基本台帳法では、行政サービスの効率化をはかるため、全国民の番号づけと全国ネットワーク化のプランが導入されている。 SSN 米国の社会保障番号(Social Security Number)。本来は年金支給のため全加入者に付与されたが、身分証明用の番号として、銀行口座開設・納税など生活のあらゆる場面で利用されるようになった。 サイファーパンク Cypherpunk 個人のプライバシー保護、暴政への抵抗の手段として、電子暗号の技術を人民にあまねく行き渡らせることを主張する運動。公開鍵暗号システム「PGP」の無料配布という重要な成果を生んだ。 |
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山根 その場合、トレースだけではなく、記録に基づいた先読みというメカニズムも働いているわけですね。実際、イーノニマス・コムというプライバシー企業はアマゾン・ドットコムの個人情報保護策について最低の格付けをしています。 山根 もうすでにやっているという話もある。例えば「エシュロン」です。 エシュロンというのは言葉は最近になって出てきましたけど、それ以前から、NSA(米国家安全保障局)がデジタル盗聴しているというのはすでに公然の秘密だったわけです。 例えばUNIXの世界で有名な、GNUのEMacsというエディターにも、危険なキーワードを入れる機能が入っていて、それでメールを送ると、NSAを混乱させることができるとされている。 山根 確かにジョークプログラムです。でもこれで笑うためには、NSAがネットワークのゲートウェイを盗聴して流れる通信をすべて検索しているという想像力が必要なわけです。これでNSAに処理能力以上の負荷を与えて攻撃しようとか言い出したらただの妄想ですけど。 山根 私も最近、プライバシーという言葉を定義なしに使うのは避けて、個人を特定する情報のコントロールなどと言い換えています。あるいは、生体情報や医療情報、記録の改竄・追跡・先読みなど、情報技術について我々はもっと意識する必要があるでしょう。気持ち悪いとか怖いとか言うだけではなく、誰がどう使うのかを明らかにすること。そして我々が、どういう社会を選ぶのかということをイメージする努力が必要だと思います。 2000年3月14日、東京・新宿にて |
エシュロン Echelon 米国家安全保障局(NSA)が運営しているといわれる国際的な監視・盗聴ネットワーク。英語圏諸国(米、英、豪、加、ニュージーランド)を中心に、電話、電子メール、ファクス、電信による通信内容を自動的に記録、ソフトウエアによる「フィルタリング(抽出)」で犯罪者、テロリスト、またはその予備軍とみなされる者の通信をピックアップできるという。欧州議会では対策を審議中。 |
米厚生省(Department of Health, Education, and Welfare)、1973
Simson Garfinkel, Database Nation, O'Reilly & Associatesより引用
2000.7.3公開、7.25修正、2001.11.21ディレクトリ移動